ル・ボナーの一日
二台のTE-2
2011年11月09日
革カバンは革包丁で手漉きして手縫いで縫えば小さな道具だけで機械はなくても作れる。でもそれは趣味の範囲内での事で、仕事でカバンを作るには最低漉き機は必要で、オール手縫いしない場合はミシンも必要だ。この二つの機械さえあれば仕事になる。私はカバンを作る事を生業にしてから10年以上この2種類の機械のみで革カバンを作っていた。合理的に数を早く上げるには他にも色々な機械が必要ではあるけれど、ちゃんとした製品に仕上げる上ではこの2種類の機械があれば十分。
特にミシンには愛着がある。私たち二人はこの1970年代に製造されたTE-2という上下送り半回転のアームミシンを使っている。前がハミ用で奥がボンジョルノ用。それぞれが使いやすいように仕様をアレンジして使っているので2台ある。今は中古でしか手に入れる事の出来ない半回転のこのミシンが私たちは好きだ。今は総合送りの全回転ミシンが全盛で、その方が便利で問題が生じにくく縫製もスムーズ。私も一時ミシン界のベンツと言われているアドラー社の最新の総合送り全回転のアームミシンを大枚叩いて購入した事があったけれど、どうもステッチがしっくり来なくて結局それまで使っていたこの古いタイプを再び使い始めた過去がある。でもこれは私たち二人の個人的な思入れであって、仕事で使うなら最新のミシンの方が間違いありません。デジタルカメラ全盛の時代に、フィルムで撮り続けるプロカメラマンと似ているかも。
家庭用ミシンで使われている片送りだと革の厚みの変化に付いて行ってくれないから、押さえが2つある上下送りは最低限必要だ。ただ総合送りと比べると安定感は全然劣る。それと下送りのギザギザの痕が製品の裏に残るので敬遠される。
もう製造していないタイプなのでパーツは多めに持っている必要がある。特に押さえは縫いやすいように削って加工しながら用途別に使うので予備で持っていないと大変だ。
それと純正の状態でなく後から付け加えたパーツはこの上部糸調節のパーツ。これは糸の上下のバランスをとるのにすごく助かる。その上上糸の絡みを相当減らしてくれる。
量産を久しぶりにやっていて、仕事が相当遅くなっている自分に気づく。最新の総合送りのミシンで縫うと少しは早く出来るのかななどと思ったりもするけれど、でもやはりこのTE-2で縫うのが楽しい。最後までこのミシンで職人を全うする所存です。
Le Bonheur (08:31) | コメント(1)
「ル・ボナー」らしいですね。その「らしさ」(こだわり?)から,魂のこもった作品が生まれるのでしょうね。
Re:ボンジョルノより
ありがとうございます。
このミシンと職人人生を全うしたいと思います。