ル・ボナーの一日

大好きなペリンガー社が作り出す革たち

2010年07月05日

世界的にクロームなめしのタンナーは厳しい。スウェーデンの大手タンナー・ボルゲ社が廃業し、それ以外のヨーロッパの大手タンナーも厳しい状態だ。経営健全化をめざし効率良く有名ブランドの要望に沿った皮革を作る体制に方向を転換すれば、一時しのぎは出来るけれど良い革を作る技術と伝統は置き去りにされ、結果的にはボルゲ社と同じ運命を辿るだろう。個々のタンナーの持つ伝統的な技術を大事にし、それを評価する市場をタンナー自身が構築する営業努力が必要な時代を迎えているのではないだろうか。 そんな中ペリンガー社は小規模で大資本グループに属さず家族経営で来たから、こんな時代でも素敵なクローム革を作り続けているヨーロッパにおいても珍しいタンナーだ。そんなペリンガー社のUlrich Ludwig Perlinger社長が年に一度来日するようになって3回目のミーティングが先日東京浅草のサライ商事で行なわれた。 %EF%BC%92%EF%BC%90%EF%BC%91%EF%BC%90%E5%B9%B4%EF%BC%96%E6%9C%88%20028.jpg 前回までは少し緊張ぎみだったペリンガー社長も、今回は相当慣れたようでアットホームなミーティングとなった。私たちの時間は今回は気心知れたタクヤ君とカンダミサコさんとの3人で。要望やオーダーそれにヨーロッパの皮革業界の現状など色々話した。こういったヨーロッパのタンナーと私たちのような小規模にモノ作りしている者たちの意見を反映させる場を作ってくれるサライ商事という皮革問屋の姿勢には心から感謝している。そしてクロームなめし革のメインタンナーをブランド力のあるフランスのデュ・プイ社から内容重視でペリンガー社に変更する決断を下したサライ商事には感服します。 %EF%BC%92%EF%BC%90%EF%BC%91%EF%BC%90%E5%B9%B4%EF%BC%96%E6%9C%88%20078.jpg クロームなめし革を作るタンナーはボックスカーフ系の革を見ると、そのタンナーの技術と姿勢が分かると私は思っている。私の知る限り現在作られているボックスカーフ系の革でペリンガー社のクリスペルカーフが最高峰だと思う。この質感には惚れ惚れする硬質な色香がある。その上昔あったイタリアンカーフを思わせるねっとり感も持ち合わせている。クリスペルカーフはコードバン並の高価な値段するけれど、使いたいと思ってしまう素晴らしいカーフだ。そして来年のミーティング時には、私たちが大好きだった今では作られていないカーフ革たちの復刻をお願いしようと思っている。ペリンガー社ならその希望を叶えてもらえそうな気がしている。 %EF%BC%92%EF%BC%90%EF%BC%91%EF%BC%90%E5%B9%B4%EF%BC%96%E6%9C%88%20083.jpg 現在クリスペルカーフで作った品で店頭に展示してあるのはポーチ・ピッコロだけになっている。これからクリスペルカーフの製品を増やしていきたいと思っています。その手始めは今秋発表する「ZANSHIN残心」シリーズの革小物たち。色々な種類の革で作る予定にしているけれど、主役はこのクリスペルカーフ。サンプルを数カ月使ってみました。ヨーロッパ旅行でも酷使しましたがこれは良い。クリスペルカーフの質感が生きる革小物シリーズだと実感した。 %EF%BC%92%EF%BC%90%EF%BC%91%EF%BC%90%E5%B9%B4%EF%BC%96%E6%9C%88%20074.jpg ペリンガー社のシュランケンカーフはル・ボナーのレディースバックのメインレザー。カラフルな色いっぱいあって神戸らしさを表現するのに無くてはならない素敵な本シュリンク革。メンズバッグでもカラフルなシュランケンカーフ使って作るようになった。ル・ボナーの定番中の定番のパパスショルダーでも作るたびに定番のミネルバボックスの3色以外に、シュランケンカーフでも作る。前回はライムグリーンとオレンジで作ったけれど残りオレンジ1本になった。次回はジーンブルーとトープで作る予定。 %EF%BC%92%EF%BC%90%EF%BC%91%EF%BC%90%E5%B9%B4%EF%BC%96%E6%9C%88%20038.jpg ミーティング終わって記念写真。輸入皮革のスペシャリストのサライ商事の社長と常務はこのブログ初登場。二人とも若くて大きい~。それにしても我々3人は普段着で失礼してしまった。でも暑いんだものクールビズでしょう。梅雨のないドイツ人のペリンガー社社長も、日本の蒸し暑さに相当参っているご様子。でも充実したミーティングでありました。これからもペリンガー社の革にぞっこんのボンジョルノでありました。

Le Bonheur (22:37) | コメント(5)

Comments

  1. pretty-punchan より:

    昨今のグローバル化や、新興国への生産拠点のシフト化は低価格商品を雪崩の如く生み続け、かつての有名ブランドも自社のブランドを持ち崩し、挙句に第三者の資本傘下に組み入れられてしまい、「良い物には相応の代価を」という基本原則が大いに損なわれています。高嶺の花であっても、それを手に入れる日を心から楽しみにして毎日暮らすというプロセスと、手に入れた時のまくらもとに置いて寝たいほどの感動と、長く使うことによってはぐくまれる愛着と、ステージごとに違う心の揺れ具合をこよなく愛することが出来る人は、上述した現状に苦い思いを抱いているのではないでしょうか。梅雨時の今、透明のビニール傘が幅を利かせていますが、貧しい風景だなと、傘好きでもある私は思います。ぺリンガー社の革は、貴店やカンダさんの革製品に生まれ変わっていつも身近にある。その豊かさは中々得られないもののではないかとこのブログを読んであらためて思いました。
    Re: ボンジョルノ より
    傘もだったんですね。だからオーダーする鞄には全部全面傘止め用のベルト付きだったんだ。これで理解できました。
    まったくもって面白くないモノが大量にあって、面白いモノは少ししかない時代です。でもそうだから私たちのような零細モノ作り人の存在理由もあるのかななんて思ったりもします。頑張って面白い素材作っている人たちとタッグを組んで、面白いモノ作っていこうと思います。

  2. yagi より:

    ル・ボナーさんのダイアリーカバーダブルを愛用しています。
    ダークブラウンのクリスペルカーフがとても気に入っています。
    「ZANSHIN残心」シリーズの革小物にもダークブラウンの
    クリスペルカーフを採用頂ければ幸いです。
    Re: ボンジョルノ より
    残心シリーズではクリスペルのダークブラウンでも作ります。楽しみにお待ちください。

  3. mari より:

    いつも楽しくブログを拝見させて頂いております。
    北は北海道の日下公司さんから西は神戸のルボナーさんまで、日頃から素敵だと思うほとんどの鞄屋さんのHPにペリンガー社さんとのミーティングの記事が記載されていたのはこうした企画の一環だったんですね。納得しました。
    流れ作業より創造的な仕事には少数精鋭である個人や中小企業の方が有利なのかもしれません。
    ちなみに、創造的な仕事に携わる人は感性を磨く必要がある、とはよく聞きますが、ひとり美術館に足を運ぶのと、こうした交流で刺激を受けるのとではどちらがより心が揺さぶられるのでしょうか。
    又別種の感動なのでしょうか。
    日頃感性を磨くためにされていることがありましたら教えて下さい。(万年筆と時計以外で)
    Re: ボンジョルノ より
    感性を磨くために何か意識してしようと思った事はないですね。ただ普通に過ぎる日々のささやかな変化を感じとり楽しめたらとは思っています。

  4. ノブ より:

    『感性を磨くために何か意識してしようと思った事はないですね。ただ普通に過ぎる日々のささやかな変化を感じとり楽しめたらとは思っています。』
    カッコイイ!
    類稀な物欲と好奇心の発露の日々ですね。
    Re:ボンジョルノより
    私のモノ好きは多方向に興味の矛先が向ってしまい収拾がつかない状態ではありますが、どれも可愛いものです。先日も驚異のモノ好き時計ライターN氏が来店し色々話しましたが、こんなほどほどで良かったなと思います。これからもほどほどで頑張ります。

  5. mari より:

    感性を磨くために何か意識してしようと思った事はないですね。ただ普通に過ぎる日々のささやかな変化を感じとり楽しめたらとは思っています。
    ご回答ありがとうございます。
    人が『世の中って美しいものがたくさんある』と感じるには『自分は生きているだ』という実感が不可欠で、生きている実感というのは日常と直結したものかもしれない。だったら日常のなかに美しさはあるのかのしれない。。。
    と上記コメントを読み、阪神大震災を思い出しながら自分なりに考えたりしたのです、が。。。
    メールの流れを読んでいるとそうでもないような?でもない?のでしょうか!?

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