ル・ボナーの一日

ダイアリーカバーに使った革たち

2009年11月10日

%E7%94%BB%E5%83%8F7%20760.jpg 「リスシオ・ワン」紙を使って作った正方形のダイアリーノート用革カバーのシングルタイプは非常にシンプルな作りです。 ただ贅沢な革使いと丁寧な仕上げが相まって素敵な革カバーとなったと思います。 細かで破綻のないステッチングとコバの処理が製品を引き締め、 革たちが表情豊かに語りかけてくれているように思うのです。 %E7%94%BB%E5%83%8F7%20752.jpg それと表革の色とは違えた内側に使ったブッテーロと糸の色のバランスが面白い。 私は特にシュランケンカーフのライムグリーンの内側ブッテーロのグリーンという組み合わせが気に入っています。他にも小さな驚き感じる組み合わせが色々あって良い感じ。 %E7%94%BB%E5%83%8F7%20745.jpg シュランケンカーフは今やル・ボナーの定番中の定番のクローム革。 特殊な液体に漬けて革を縮めて革本来の繊維のシボを浮き立たせるシュリンクレザーは、熱を加えて型押しする均一な模様とは違って、不均一で表情豊かだ。 シュリンクレザーと謳っていても市場に出ている大部分の革は型押しを併用している。 それに比べペリンガー社のシュランケンカーフは数少ないシュリンク加工のみの本シュリンク。 100%シュリンク加工すると革は20%ほど凝縮する。つまり1デシ(革の単位で10cm四方サイズを1デシと言う)あたりの単価が高くなる。 しかし型押しの熱加工を加えたシュリンクと称している革とは違って、本シュリンクで仕上げたシボの表情はナチュラルで強固に仕上がる。 その上このシュランケンカーフのカラフルでナチュラルな色出しは絶妙です。 顔料で表面を処理した場合カラフルな色は安易に作れるけれど、革の本来持っている質感が表現できないし、革表面をコーティングしたのと同じ状態になり革が呼吸できなくて長持ちしない。 それに比べこのシュランケンカーフは染料仕上げをした上にギリギリ薄く顔料を塗った併用型で仕上げている。染料だけだと色は鈍くなってしまう。 シュランケンカーフはそんな風に妥協せずに作り上げたシュリンクレザーです。 ただ革が本来持っているシボを浮き立たせて表情豊かに作られたシュランケンカーフは、 シボが不均一で1枚1枚違った表情を持っているし、1枚から裁断した部位それぞれでも大きな差異が生じる。裁断人泣かせの革でもある。でも魅力的な革です。 %E7%94%BB%E5%83%8F7%20747.jpg カラフルなシュランケンカーフをメインで今回このダイアリーカバーは作りましたが、 イタリアのクラシコ・バッファローとクリスペルカーフの各2色でも作りました。 クラシコバッファローは大和出版用として作り、クリスペルカーフはル・ボナー限定品として作ったけれど、ダブルタイプの豪華バージョンではクリスペルカーフの2色はPen and message.さんで主に販売することになっています。 %E7%94%BB%E5%83%8F7%20749.jpg クラシコ・バッファローはタンニンなめしのバッファロー(水牛)革です。 バッファローをシブでなめすのは珍しい。シブなめしゆえに素敵なエージングを楽しめる革です。 表面強度は相当ある革だけれど、相当に伸びる革の上に繊維には芯が感じられ、1枚仕立てには不向きな革であり、組上げ段階で難儀する革です。 その上元々あるこのシボはシュランケンカーフのシュリンク加工で生み出したシボどころではない革表面の表情の差異が大きい。作る上では難儀する革ではあるけれど面白い革だ。 %E7%94%BB%E5%83%8F7%20758.jpg クリスペルカーフはドイツ・ペリンガー社が作るクロームなめしの牛革の最高峰ボックスカーフ系の革で、その渋い光沢ある表面はまさに漆の深みを感じさせる。 その誠意あるタンナーの仕事に深く敬意を感じる。 一般的にボックスカーフは生後6ヶ月のカーフ(日本ではキップ)をなめすけれど、クリスペルは3ヶ月ほどのベビーカーフ(日本ではカーフ)なのできわめて繊維の肌理が細かく美しい。 そんなクリスペルカーフでも強度のあるショルダー部分にはトラ(スジ)が生じる場合もある。 その部分を今回使ってみた。下のダークブラウンのガラス面のような肌理に比べて黒の革らしい表情はクリスペルカーフのイメージを覆す。でもこれもクリスペルカーフなのです。それも一番強度持った部分にこのラインが生じる場合があるのです。 今回もクリスペルの黒には赤ステッチ。これはP&Mの吉宗さんの希望ですが、ル・ボナーでもノーマルな黒革に黒ステッチだと売れなくて、黒革に赤ステッチだと良く売れる。 なぜだか疑問だったけれどある顧客が、IBMのノートパソコンの「Think Pad」をイメージする年代の人が多いからだと。パソコン第一世代の憧れのノートパソコンが「Think Pad」。そのノートパソコンは重厚な黒のボディーに赤色のアクセントが印象に残るデザイン。 そうなのか、やはりル・ボナー界隈のお客様たちの年齢層は相当高いようだ。 これからも黒革に赤ステッチはず~っと作り続けるのだろうなぁ~。

Le Bonheur (21:26) | コメント(4)

Comments

  1. rina より:

    初めまして!!
    ブログ、いつも楽しく読ませて頂いております。
    ダイアリーカバー発売、待ちに待っておりました!
    先日、分度器さんでスカイ購入しました。(リスシオダイアリーと一緒に)
    まだ、届きませんが、かなりワクワクしています。
    一年程前、万年筆にハマリ、万年筆関連のブログなど見るうち、
    ル・ボナーさんを知りました。
    いつか神戸のお店にうかがいたいと思っております。
    (何分、当方かなり遠い田舎在住です)
    Re: rina さん
    始めまして。コメントありがとうございます。
    リスシオ・ワン紙に万年筆で書くと、きっと感動すると思います。毎日筆記するのが楽しくなると思います。
    スカイを選ばれたのですね。ハミが大好きな色です。シュランケンカーフは綺麗な薄い色もそんなに汚れません。汚れた時でも消しゴムでこすって綺麗にしてもも大丈夫ですから安心して使ってください。
    是非いつか来店してください。お待ちしてます。
                            ル・ボナー松本

  2. orenge より:

    革の「トラ」は,私は結構スキです。個性的で味わい深いですから。クリスペルカーフのトラの部分は,野武士ようでステキですね。「黒×赤」は、カジュアル度アップで合わせやすいですね。
    Re: orenge さん
    トラは私も抵抗ありませんが、クリスペルカーフのガラス面のようなイメージを多くの人がお持ちなので、実際に見て頂いて理解して頂いた上でないと販売できません。
    こういったトラも顔料厚塗りの革だと隠れてしまいます。
                             ル・ボナー松本

  3. まっきい より:

    昨日、P&Mさんで、ライムグリーンのダブルを妻と揃いで購入しました。(リスシオ1やデブペンケースも2個セットで)
    そのうち、腕時計のベルトを作成して貰おうと思っていますが、なかなかお店に寄ることが出来なくて、いつになることやら…という状況です。
     機会がありましたら、宜しくお願いいたします。
    Re:  まっきい さん
    ライムグリーンの表と内側のブッテーロのコンビネーションは私も一番気に入っているダイアリーカバーです。
    ブラッシングすると素敵な光沢が出てきますよ。試してみてください。
    時計ベルトのご注文はお店でのみお受けしているので、是非来店お待ちしています。
                             ル・ボナー松本

  4. gs より:

    クリスペルカーフのダイアリー欲しいですね。
    ペン&メッセージさんで購入できると良いのですが・・。
    あと僕は若造ですが、黒に赤のアクセントはすごく好きです。
    日本では昔から黒い着物の裏地に赤のような派手な色をチラッと見せるのが洒落ていると思われていたようで、それは今も変わらないのではないのでしょうか?
    全体が派手な色ではなく、さし色に赤って所がミソですね。
    個人的には黒の裏地にワインレッドのピッグレザーが一番好みです。
    Re: gs さん
    ダイアリーカバーの追加生産は現在予定していません。作るとしたら秋以降だと思います。
                         ル・ボナー松本

Leave a Comment

入力エリアすべてが必須項目です。メールアドレスが公開されることはありません。

内容をご確認の上、送信してください。

アーカイブ