ル・ボナーの一日
1914年製のエルジンの懐中時計
2008年11月23日
アメリカのボストンに1年間滞在していた顧客のAさんが帰国され、
その時ボンジョルノさんが喜ぶだろうと、このエルジンの懐中時計を頂いた。
アメリカの中で一番文化的で英国的な風情が色濃くあると私は想像している
ボストンの町の骨董屋さんでみつけた懐中時計を私に。私は狂喜乱舞しました。
奥様同伴の楽しいボストンでの研究生活が始まったのもつかの間、
おめでた判明し、めでたいことではあるけれど奥様先に帰国され
ボストンに着て再び訪れた蜜月生活は終止符を打ったぁ~。
そのAさんは寂しさをまぎらわすため?に、研究の傍ら暇をみてはアンティーク時計物色の日々。そんな時Aさんが見つけたのがこの懐中時計。
裏蓋を開けてムーブメントのシリアルナンバーを見ると17491875。
アメリカの懐中時計はこのシリアルナンバーで製造年を特定できる。
これは1914年製です。つまり94年前に作られた時計だということなのです。
その上19石で、上級タイプの鉄道時計ではありませんか。
これは素敵な懐中時計だぁ~!。しかしまともには動かない状態でした。
どうやらムーブメントのどこかの部品が折れているようです。
そんな時私には水谷時計修理工房があるから大丈夫。
早速持ち込み修理をお願いしました。
ガラスもその時交換していただき、
往年のこの懐中時計が活躍していた頃の姿に復活。そして水谷さんに教えて頂いて分かった。
この時計の時刻合わせは前蓋を開けて1時位置の普段隠れているピンを移動してから、
リューズを動かして時刻を合わせる方式の時計であることを。
知らなければきっとリューズを力ずくで引っ張って壊していたことでしょう。
裏蓋にはその当時の最新か夢の汽車の図柄がエッチングされていて良い風情。
職人の手仕事であった頃の時計が私は好きです。
この時代のアメリカの時計はスイスにも負けない、素晴らしい時計を作っていました。
その後アメリカはモノ作り文化を大事にしないようになり、時計文化も衰退していった。
もうこんな素敵な時計を作っていた頃のアメリカには戻れない。
アメリカ発のグローバリズムとは名ばかりの拝金主義が生みだした全世界的な経済の失速。
アメリカはそんな失敗をしても、丁寧なモノ作りをしていた時代には戻ることはない。
アメリカ経済が戻るとしてもその時は、泣く国を生みだしながらマネーゲームで数字合わせ。
日本はモノ作り文化を大事に育み続けて欲しい。それが日本の生命線。
私は日々カバンを作りながら、その机上にはこの懐中時計が時を刻んでいます。
アメリカにモノ作り文化があった時代の残り香を楽しんでいるボンジョルノでありました。
Le Bonheur (22:08) | コメント(2)
Comments
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いい時計ですねえ。文字盤がいいです。この文字盤ならずっと見ていて飽きが来ません。作り手の暖かさを感じます。ボンジョルノさんがご指摘の通り、アメリカのモノ作りにおいて良い仕事をしていたのは1930年代までだったような気がします。
ライターの世界では非常に顕著です。それにしてもいい時計です。
Re:pretty-punchan さん
時代を経て捨てられずに残っている品は何でも素敵だと思っています。そんなモノが好きだし、そんなカバンを作りたいと思っています。
本当は最先進国でありながらいい加減さを内包しているアメリカが大好きなボンジョルノなのですが、その魅力が今のアメリカからは見えてこないのが残念です。
ボンジョルノ松本
「エルジン」の懐中時計,いいデザインですね。針,文字板,スモールセカンドなどバランスがすばらしいですね。状態も良さそうですし。ケースは銀無垢か真鍮にメッキでしょうか?ケース,歯車などに彫金をほどこしているところから,当時はかなり高価な品物であったのでしょうね。受け軸の周りもいいですね。心温まる懐中時計です。
Re:orenge さん
裏蓋のメッキのハゲぐらいで、メンテをかけて抜群のコンディションになりました。持ち歩くことはめったにないと思いますが私の作業机に片隅で時を刻み続けることになります。
ル・ボナー松本