ル・ボナーの一日
絞りのペントレー思案中
2008年02月20日
絞りのペンケースの木型が出来上がり試しで絞った品が届いた。
私が万年筆趣味の道に引きずり込んだ大和出版印刷の若社長が「革のペントレーが欲しいよ!」という要望に答えて企画進行中の品であります。
絞りのペンケースの成功に気を良くした私は、この技術を使った品を色々作りたいと考え、まずはこのペントレー。この先鞄にまでこの技術を広げてゆきたいと思っています。
前回のペンケースもそうでしたが、製品として登場させるまで何回も木型を作り直し修正を繰り返すことになります。絞り技術を使った革製品は、その最初の試行錯誤の辛抱が必要です。
今回も多くの問題点が露呈しました。
革に無理をかける木型で絞ると、このように裂けてしまいます。まずはこのように裂ける原因を推測し木型を作り直します。ただその推測が不正解の場合は当然あり(その方が多い)、何度か繰り返し正解を導きだします。その繰り返しの中でフォルムも無理のない美しい曲線のラインになってゆきます。
万年筆好きになって知ったことは、大事な筆記具同士接触しないで欲しいという事。
その考えからペン同士の間に山を作りました。中央部分は納めた筆記具をつまみ出しやすいように山がありません。この形状が裂けた大きな原因です。でも山をなくしたらこのペントレーの最大の魅力が失われることになります。それは絶対ダメです。魅力を残して、なくてよい無理を消去し少しずつ完成へ一歩一歩。
二枚革を貼り合わせた状態で革を絞るのは難しい。ハンドメイドの絞りでも二枚貼り合わせで絞っているのはTAKUYA君しか私は知らない。機械絞りでも革を2枚貼り合わせて絞れるのは、現在お願いしている80歳を過ぎた老絞り職人しかできないんじゃないかと思う。それゆえ、職人さんが元気なうちにその技術を最大限表現した絞り技術を使った品を残していきたいと思っています。
私は万年筆と時計に少し?興味を持っています。万年筆は革のペンケースに入れて使っていますし、時計は金属ブレスのものはなく全部革ベルトです。これは仕事の役得を最大限利用してるという部分は確かなのですが、それ以上に変化を望まない硬質な時計や万年筆と対極にある革という素材は、朽ち果てる美学(エージング)を持った素材です。そのことが良いバランスを持って硬質な品と折り合いをつけているように思うのです。
革の持つ質感が硬質な大事な品を、安心感を持って包み込み、優しくフィットします。革という素材の可能性の広がりを感じながら、しぼりのペントレーの試行錯誤は続きます。
Le Bonheur (20:39) | コメント(2)
Comments
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ノブ さん
ペンケースの紹介ありがとうございます。私は自分のブログで時々自分の所有物を、見たくない人も多いと思いますが、紹介することで充分満足しております。
ノブさんも万年筆趣味楽しんでください。
松本様
またまた刺激的な作品ですね。
一緒に映っているペンも魅力的です。最近万年筆のインプレ広場で初心者の怖いもの知らずのインプレッションをしています。ルボナーのペンケースも紹介させていただきました。
http://imprehiroba.net/
松本さんのコレクションも紹介してください。とても興味があります。