
TAKUYA君の作った手絞り手縫いのハミの金魚柄の万年筆用の真っ赤なグリマルディーペンケースを見ながら話した。
このペンケースの欠点、修正した方が良い部分を、チェックしてみてと言われ、まじまじと見てみた。
大事な筆記具を1本入れるケースとして、無駄な部分はすべてそぎ落とし、必要な部分はすべてバランス良く納まってデザインされている。機能美すら感じさせる。文句がなぁ~い。
強いてあげるとすれば、値段が高ぁ~いということか。
しかしその高ぁ~い価格も、個々の大事な筆記具にピタッとフィットさせるため木型を削り、一点ずつ絞り上げ、細かな手縫いで仕上げる手間と特別な技術を考えると、この価格は納得する。

革2枚重ねて絞ると、薄くても固く仕上がり大事な筆記具を安心ガードする。
手絞りだから出来る背面との縫い合わせ部分に向かって内側に絞り込まれた独特の美しさ。
この状態は手縫いでないと縫えない。この手絞り、手縫いが大きな胴の万年筆でもスマートに納まる理由。

クリップ部分に負担をかけないようにと、その部分は薄くて傷つきにくいリザード革をサンドイッチ。
その実用性がグリマルディーのチャーミングなワンポイントにもなっている。
カブセ付きグリマルディーはクリップ部分はサイドにあり、スマートに仕上げるための配慮。

カブセ部分は先端部分を硬く作っていて差し込みやすくしている。
その上絞りの曲線に沿うカーブを描いている。
機能をより美しく表現している。
TAKUYA君と知り合ってもう少しで1年。進化し続けるビスポーク革小物職人です。
去年1年、色々ありすぎて、親しくなってからまだ1年たらずなんて驚きです。
TAKUYA君がプロとしてデビューしてから2年弱。多くの人たちと交流を持ち、そのアドバイスを自身の中で昇華し、TAKUYA君の作品は自身の不易(アイデンティーティー)を表現している。
私はそんなTAKUYA君から多くの刺激を受ける。
彼の作るペンケースの指向性はビスポークの靴作りと共通していると思う。単一のモノでありながら微妙に違うモノをベストの状態で納めるために工夫するという部分において。微妙なフォルムやライン、細部の仕上げなどが良し悪しを大きく左右するモノ作り。
それに比べカバンはそれらと相対する革製品です。
まず入れるモノが人それぞれ違い、同じ人でもいつも同じものを入れる訳ではないし、単一の方向に特化しにくい革製品です。入れるモノから創造して作りあげるのではなくて、こんな表現をしたいとデザイン、創造してから、柔軟に機能を付け加える。カバンは外から内へ作り上げていくことが多い。
そして特化していないで多くの用途を含みこむので、細部の完成度より、バランスの方が大事だったりする。車を作るのによく似ているように思う。
でも、グリマルディーのデザイン、フォルムのように、内側から緻密に練り上げたカバン作りが出来たとしたら、画期的だし凄い事だと思う。
素敵なもの作りと関わりながら刺激を感じ、私達も進化してゆきたい。
ル・ボナーの不易(アイデンティーティー)って何なんだろう?。
ノートを受け取りました。想像以上の質感です。このノートも大勢の方の誠意で作り上げられているように感じます。ル・ボナーさんの鞄にも同じものを感じます。誠意をもって革を鞣した職人さんがいて、その革を鞣した職人さんに対しても、使われる方に対しても誠意を持って作られるル・ボナーさんがいる。本当に素敵なことだと思います。その誠意に私は惹かれます。だから鞄を大切に使おうと思います。