ル・ボナーの一日
ペリンガー社の革
2007年11月05日
現在私はオーダー品の制作の合間をぬって小物作りをしております。
ひとつの事に集中出来ない状態でのモノ作りの日々はストレスを感じます。達成感というものを感じない中で作業を繰り返すことは、モノ作りの喜びを放棄している状態で作業をしていることになります。
あれもこれもやろうとしても、空回りするだけです。シンプルにならないといけません。頭に中の整理整頓をして、2007年の残り2か月をストレートに走り抜け、気持ち良くへらへらに疲れて充実感を感じながら年末を迎えたいものです。
ブックカバーはこれからコバ処理です
文庫本のブックカバーを作っています。今回は初めてシュランケンカーフをメインに作っているのですが、タンニンなめしの革と違ってコバの処理が収めにくいために苦戦しております。
ブッテーロなどのタンニンの革で作れば慣れたコバ処理でスムーズに作業ができるのですが、カラフルな発色のシュランケンカーフでブックカーバーを作りたくなってしまったのです。クローム革のそれもソフトな質感の革をヘリ返しでなく、磨き処理で綺麗に仕上げるのは大変です。
裏にスムースな革を張り合わせて作れば、シュランケンカーフのコバ処理もそんなに難しくないのは分かっていますが、それではすごく高価なブックカーバーになってしまいます。1枚仕立てでコバを綺麗に処理することが大事なのです。頑張りま~す。
それにしてもペリンガー社の作るクロームなめしの革は良い。
タンニンなめしの革の場合小さなタンナーでも作れますが、クロームなめしの革は環境問題等にも配慮した設備も作らないといけないので、規模の大きなタンナーでないと作れない。そのため経営効率優先の革を作っているタンナーが大部分なのですが、ドイツのペリンガー社は誤魔化しのない革を作っている数少ないクロームなめしのタンナーです。
ル・ボナーではそのペリンガー社のシュランケンカーフをメインに使っていますが、ここまでシュリンク(液体に漬けてシボを出す)加工をしっかりしている革は他にありません。その上発色が素晴らしい。単純な染色ではこのカラフルで、光の具合で違った表情を見せる色は作り出せません。
クリスペルカーフの革の表面
マローカーフの革の表面
そんなペリンガー社が作ったクリスペルカーフというボックスカーフ系の革を入手しました。
ボックスカーフはクロームなめしの牛革の中で最も技術を要する革です。陶磁器でいうと青磁や白磁の様な革です。それぞれのタンナーの技術力と革に対する考え方を見測ることが出来ます。
きめの細やかな表情、しっかりしたなめしから生まれる弾力性。現在多くのメーカーが使っているフランスのデュ・プイ社のマローカーフと比べて見ても違います。マローはデュ・プイの作る革の中では抜群にいい革なのですが、クリスペルはそのボックスカーフを完全に超えています。私の知る限り世界最高峰のボックスカーフです。クリスペルカーフの表面の表情はまさに小宇宙を想像させます。
そのため値段もとんでもなく高価で、サンプル買いしかできず定番として手に入れることは出来ません。
そのクリスペルカーフで、ハミがグラスを作りました。特別なグラスです。
デリケートで強靭な腰を持った特別な革で作ったグラスは、作る上でも特別気を使って作らないといけません。出来上がってからも手袋をして扱います。素手で触ると独特の光沢が曇ってしまいます。
このグラスの行先は決まっていますが、しばらくの間注文主の了承をえてル・ボナーにいます。もう鞄を作れる量のクリスペルカーフは残っていないので、この特別なグラスをしばらくの間ル・ボナーに滞在させることを許していただきました。光に映えるクリスペルの表情を愛でている私たちです。
クリスペルカーフで作ったグラスについては、この後ハミの製作日誌で。
Le Bonheur (07:06) | コメント(3)
Comments
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お世話になっております。
金曜日、完成間近のクリスペルカーフ製“グラス”を拝見した際、言葉を失いそうでした…。
タンニン鞣しの革で作ったブリーフケースのような重厚さに加え、光沢の鋭さ、そして優美さは圧巻でした!!
私も松本さんにお願いしておくんだった…。 -
yukoさん
ブックカバーは第1弾は、シュランケンのオレンジ、ゴールド、紺とブッテーロの赤です。第2弾でシュランケンの水色、ライトグレー、トープとミネルバボックスで色々作りま~す。
クリスペルのグラスはしばらく展示させてもらうので、見にきてくださぁ~い。
Oさん
良いでしょう。コードバンより高価な革なんですよ。完成したクリスペルのグラスの迫力は別世界です。見にきてください。
松本さま
ご無沙汰しています。
又また、主人が足をやってしまい外出を控えておりました。
でも、大好きな神戸や六甲の空気が恋しくなってきました。
近いうちにお邪魔しますね。
ブック・カバーはいつ頃、お店で皆さんの目を楽しませてくれるのでしょうか?
好きな「グラス」も拝見したいです。
では、お風邪などひかれません様に・・・・・・・・
・・・・・・・ゆうこ