ル・ボナーの一日

アタッシェとトランク

2007年08月14日

%E5%B0%8F%E3%82%A2%E3%82%BF%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A52%E6%9C%AC.jpg 久々にアタッシェを作りました。今回はそれもナイルクロコのラージサイズを使ってのオーダー品だったので大変でありました。失敗は許されない高級皮革を使っての手縫いのアタッシェ、予行演習を兼ねてイタリア、フラスキーニ社のデッドストック革のムスタングのバーガンディー色を使ったアタッシェを並行して作りながら、オーダー品のクロコのアタッシェを作りました。 %E3%82%A2%E3%82%BF%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%81%AE%E6%89%8B%E7%B8%AB%E3%81%84.jpg 小さいけれど一寸11目で菱を切り、芯の板とあわせて12ミリほどの厚みの手縫いです。縫ってみると分かります。これは大変な作業です。多くの市販のアタッシェは貼りあわせるだけでステッチは飾りステッチです。ル・ボナーでは芯の板と一緒に手縫いするタイプのアタッシェしか作りません。そうすれば丁寧に使ってもらえれば、次世代まで残すことが可能なアタッシェになります。特に角の手縫いはカスガイの役目を担っています。LVのように金属の角カバーを釘で打ち付けると楽なのだけれど、それではカスガイそのもので無粋です。 %E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF%E5%8F%A3%E5%85%83.jpg %E3%82%A2%E3%82%BF%E3%83%83%E3%82%B7%E3%82%A7%E5%8F%A3%E5%85%83.jpg トランク(左)とアタッシェ(右)の口元の違い。 私はトランクとアタッシェを分けて考えています。この分類は一般的ではないかもしれないけれど、芯に厚ボールを使って口元に金属の枠を入れて作った箱型の鞄をトランク、芯に木の板を使い木箱に貼り込んで作った鞄をアタッシェと便宜上私は考えています。見た目の違いはトランクは口元が本体にかぶさるようにとじます。アタッシェは口元がフタと本体が面一になります。大正、昭和の初期に多く作られ古道具屋さんなどに今も残っているのがトランク。ルイビトンなどが作っているのがアタッシェだと考えています。 厚ボールを芯に使ったトランクは弱そうに思うでしょうが、手縫いで補強し弾力性があるので、板に革を貼り込んだだけのアタッシェより全然丈夫です。だから100年経ってもトランクは今でも蔵の奥や古道具屋さんに存在しますが、100年経ったアタッシェはそんなに見ることがない。 そんなトランクが私は大好きで、鞄職人30年の間によく作りました。しかしそのレトロな風情は、現代普段使いするには違和感があり、それに比べアタッシェのシャープなフォルムは現代のスタイルでも違和感なく使えます。しかし弾力性のない板の箱に革を貼り込んだだけのアタッシェだと板のつなぎ目がゆるみガタがきてトランクに比べて耐久性が劣ります、が角を手縫いした場合は違います。カスガイの役目をして大きなアタッシェでなければ、トランクより強度ある鞄になります。 ただその手縫いが大変。厚ボールと革のトランクの手縫いの場合菱を切るのはそんなに大変ではないのですが、板と革、それもトランクの厚みより格段に厚い部分を縫うアタッシェの手縫いは一目一目厳し~い。斜めに菱を切る部分だと2cm以上の厚みです。固くて厚い。もう手縫いのアタッシェなんて二度と作らないぞぉ~!と思いながら、体力の衰えを痛感する私ですが、完成するとやっぱり手縫いのアタッシェは作った満足感があり、また作ってもいいかなぁ~と思ってしまいます。 今回で400話到達です。一年と十ヶ月で長文ブログ400話は我ながら驚いてしまいます。多くの人からコメントやメールを頂き、それを励みに400話。これからも本業の鞄作り以外の内容が多いブログになると思いますが、呆れずにご愛顧お願いいたしまぁ~す。今日は初心に帰って鞄のお話でありました。 %E3%82%A2%E3%82%BF%E3%83%83%E3%82%B7%E3%82%A7%E5%86%85%E9%83%A8.jpg

Le Bonheur (07:30) | コメント(10)

Comments

  1. t-okuno より:

    木との手縫いはすごいですね!!
    想像しか出来ませんが
    本当に大変な作業だと思います。
    手をかけた分いい鞄の出来上がり
    ですね。
    サイズはかなり小型ですね?
    中が気になりました。

  2. ル・ボナー松本 より:

    t-okuno さん
    内側の写真公開しておきました。シンプルですがフラスキーニ社のブレンダボックスを使って作ってます。サイズは25×18×10と大変小さなアタッシェですが、迫力は相当あります。ムスタングで作った方はお店においておくので見に来てください。

  3. a_inoue より:

    昨日(14日)、やっと念願のルボナーに辿り着くことができ、プチ・トートをゲット。
    生「ル・ボナー」では、穏やかな時が流れていて、オアシスのようでした。楽しいひとときをありがとうございます。またお邪魔します。

  4. orenge より:

    2つの作品ともすばらしいですね。クロコびいきの私はクロコに見とれてしまいますね。斑がきれいですね。角は特に印象的ですね。ここまでクロコなのですね。ただ,ムスタングのアタッシェからクロコの小物が現れるのもドラマがあっていいかも・・・。クロコのアタッシェから同じカラーのクロコの小物が現れるのも統一感があっていいかも・・。

  5. ル・ボナー松本 より:

    a_inoue さん
    来てくださってありがとうございます。プティトートは25年ほど作り続けているル・ボナーの定番中の定番のバッグです。使い続けるとますます好きになれるバッグです。楽しんで使ってください。またおいで下さい、お待ちしています。
    orenge さん
    私は基本的にカーフが好きです。クロコは素材そのものが完全無比な迫力があって、作り手の思いがその迫力に隠れてしまうように思えるのです。クロコは素材が主導権を握り、カーフは作り手が。私は作り手なので。

  6. minerva より:

    ブログ400話目おめでとうございます。話題を見つけ、継続されていることは大変であると思います。でも、次回は何かな?と楽しみにしています。
    ナイルクロコのアタッシェも迫力十分。木枠に手縫いなんて、すごい。見てみたいです。

  7. ル・ボナー松本 より:

    minerva さん
    コメントありがとうございます。久しぶりですね。
    お持ちの棒屋根ボストンの角とおなじような手縫いなのですが、棒屋根はウエブロンという芯材と革を手縫いしているのですが菱切りを刺すのは容易です。それに比べアタッシェは板と革です。厚くて固いので大変です。大手ではエルメス、それと独立系鞄職人の数人。する人は少ないです。

  8. orenge より:

    ちょっと前までは,カーフが好きでクロコは趣味悪いと思っていました。でも,最近は仕立てのよいマットクロコの作品と金ムク作品に吸い寄せられます。オヤジ趣味ですね。

  9. kazubon より:

    ブログをご用意させていただいた時から、もうそんなに経つんですねー。400話まで来ましたね、ついに。いつか一冊の本にしてみたいですね。これからも楽しみにしております。

  10. ル・ボナー松本 より:

    kazubon さん
    来店した親しい顧客の人たちには本にしてくれるだぁ~と公言してしまっている目立ちたがり屋の私であります。是非お願いしまぁ~す。

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