ル・ボナーの一日
老兵の帰還
2007年07月27日
15年前に神戸に店舗をかまえた最初期にオーダーで作った総手縫いのアタッシェケースが初めての里帰りです。まだヨーロッパ皮革を使っていなかった頃の品で、アメリカ原皮の国内でなめしたタンニン革を使用しています。そのため表皮の老化が相当進んでいますが、革の柔軟性を必要としない木箱に革を貼り込んで作るアタッシュケースなので、お手入れしてオイルを入れればまだまだ現役で頑張ってくれます。
愛情を持って使っていただき、お手入れや修理で里帰りするル・ボナーの鞄たちに再会するのが大好きです。愛情を持って使っていただいている鞄は使用状態を見ると伝わってきます。このアタッシェケースはお手入れはあまりされていないですが、なくてはならない相棒となっていることが伝わってきます。
今回の里帰りの主な目的はハンドルの交換です。この頃はまだハンドルの芯に硬質ゴムを削って使っていました。硬質ゴムは革の油分を吸い取ってひび割れて早期の老化を促してしまうことが判明し、その後革を削って芯に使うようになったのですが、このアタッシェの取っ手は硬質ゴムを使っていた頃のハンドルでひび割れて革が死んでいます。同じ革の在庫は修理用にありますので、芯を革を削ったものを使って交換です。
市販の多くのアタッシェケースは飾りステッチで木箱に革を張り込んだだけのものです。そういったアタッシェは木箱の強度を貼る革が補うことはありません。ル・ボナーの作るアタッシェは木箱に貼った革を手縫いで縫い込んでいるので強度が増し15年経っても全然木箱がグラグラにはなっていません。
ピッグスキンの内貼りは15年使われ続けているけれど素晴らしいコンディションを保っています。
10年以上前に作った鞄が里帰りする時、私たち夫婦は嫁いだ娘が久しぶりに帰ってくる時の親の心境に近い思いで迎えます。愛されて日々の相棒として使われていなければ10年経ってお手入れや修理で里帰りすることはありません。10年経ってル・ボナーに里帰りする鞄たちは幸せ者です。念入りにお手入れして今まで生きた年月かそれ以上の年月をご主人さまに寄り添って過ごしていって欲しいと願っています。
Le Bonheur (06:03) | コメント(0)
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