ル・ボナーの一日
私の尊敬する1970年代のブランド
2005年11月12日
私は尊敬する職人が多くいた60から70年代のヨーロッパのブランド、特に下記の3ブランドは色々な意味で影響をうけました。
グッチ一族が経営権を持っていた頃のグッチのハンドバックです。私がいちばん注目したのはへり返しの厚みです。これだけ革を厚いまま綺麗にへり返すのはこの時代のグッチが一番です。日本の職人も綺麗なへり返しをしますが革を薄く漉いてへり返すので耐久性が劣ります。フィレンテェ職人の繊細な力仕事です。ステッチの糸はコットンでショルダーの部分のステッチはすぐ擦り切れてしまいますが、ヨーロッパ鞄の伝統を守って使っています。
この時代のグッチはエルメスにも劣らない存在感があり色香がありました。
バレクストラはメンズバックを作る上で、バランスとセンスの良き教師です。かぶせのブリーフのサイズバランスは絶妙だと思います。そんなバレクストラが一番輝いていたのが、70年代であったと思います。私が二十歳の時バレクストラのシンプルでありながら高級を醸し出すソフトアタッシェのプルミエールを見て感動したのが、今でもこうして鞄作りをつづけているはじまりでした。今でもプルミエールは作っていますが30年前に見た時の感動はありません。何かちがうのです。写真のブリーフも黄金期のものです。革はフラスキーニのボックスカーフのようにおもいます。
エルメスが高級鞄の世界基準になる前の一品です。エルメス的でないデザインですがハンパではない技術力を見せつけてくれます。ゆるみがまったく感じない緊張感のある鞄で恐れ入ります。この時代より前のエルメスの鞄を何度も見てるために、私にとってエルメスは特別なんです。
1970年代、ヨーロッパのほんとの高級鞄を手に入れることの出来る人は限られた人で、
その人たちを満足させるに十分な鞄がありました。今は色々なブランドの鞄が簡単に手にいりますが、オーラを感じる鞄は逆に見つけにくい時代になったように思います。
ファッションの名の下に大量消費されて職人の手仕事も宣伝広告のためで、ほんとに大事な事だとは思っていない。
そんな時代だから、逆に私たちのような個人の鞄職人が高い意識を持って鞄作りをしていかないとと思う今日この頃です。
Le Bonheur (22:20) | コメント(0)
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