
ヨーロッパの皮革業界も、大ブランドの消費サイクルに追従する形で、クローム系の革は特に傷がつき難く、色止め効果のある顔料染め仕上げの革が巾をきかせています。そのことは反比例して耐久性が弱まる革、馴染みを楽しめない革ということです。そんな中で、私が好きな耐久性があって、馴染みを楽しめる染料仕上げの革を探し出すのは困難な状況になっています。
この革は、フランス、デュプイ社のロダニールという革です。デュプイ社の作るカーフで、久々にドキドキする感情を懐かせていただいたクロームなめしのカーフです。
染料のみの仕上げで、フランスのタンナーが得意とする、爽やかな染め色で清潔感があります。肌触りもしっとりときめ細やかです。
ここまでの染料仕上げの革になると、原皮段階の傷を隠すことは出来ず、相当厳選した原皮を使わないといけない。そのため値段が高い。うー 使いたくても使いずらい革です。
マットでソフトな仕上がりのロダニールのようなカーフは、ボックスカーフなどの腰のある革で作る、シックな装いの鞄には向きません。カジュアルタイプの鞄に向いています。そのため価格が高いと厳しい。
市場性がないため革屋さんも仕入れてストックはしてもらえず、今回だけはサンプルという名目で少しだけ入手しました。20年ぐらい前までのグッチが作っていた、縫製のいい上品なカジュアルバッグをル・ボナーなりに再現したくて。
上品なカジュアルバッグの代表格はロエベでした。大ファッショングループの傘下に入り、昔あった独特の色香は薄まったような気がします。私にとって良き先生であったそういったヨーロッパの老舗ブランドがお金儲け優先で、心豊かなもの作り文化をこの頃軽視しているように思えてなりません。
それが私が使っているヨーロッパ皮革の品質にまで影響しています。
現在の大きな経済輪廻の中で、ほんとの豊かさが軽んじられているような気がします。
そんな中、ル・ボナーは心豊かな鞄作りをしてゆきたいと思っています。
ル・ボナーの革の棚には、イタリア、フラスキーニのデッドストックのカーフやデュプイのロダニールなど一番使うのに困るタイプのカーフ革が増えています。ゆっくり鞄に仕立ててゆきます。
いろいろな革があり、その革と対話されて出来上がるル・ボナーさんの鞄は、画像で見せてもらうだけでも、胸が高鳴ります。本当は実物が何倍もいいんでしょうが。
これからも、いろいろな革にあった鞄を楽しみにブログを拝見させて頂きます。