神戸の六甲アイランドでお店を始める前に、新宿の「バーニーズニューヨーク」に卸していた製品の中にボストンバッグがあった。25年前にこの地でショップを初めた最初期にはそれらの製品も並べて販売していた。その品の修理を頼まれたのだが、その頃使っていた国産タンニン革の表皮が部分的に死んでいるので、部分的に補修したとしてもかかる費用に見合う年月使えるとは思わないと言って一旦はお断りしたけれど、それでも良いから直して欲しいとの強いご要望にほだされてお受けする事にした。
このように革が鱗状に剥離しはじめた状態になると復元力を失った死んだ状態。粘りがなくなりすぐ裂ける。
直す部分はハンドル交換と裂けた底部分の四方の補強。その当時使っていた革はもう入手出来ないので、持ち主に了解を得て同色のブッテーロ革を使って修理する事に。
ハンドルは全取っ替え、根革はまだ傷んでなかったので糸を解き手縫いで縫直し。
元は内縫いしただけのこの部分が裂けて、その補強が大変。でもここまでやったらこの部分は永久保証ですね。
この当時は真鍮金具がメインだった。ただ真鍮の問題点はこの緑青が出る事。緑青は革を腐らせる。マメに拭き取ればば良いのだけれど、なかなかそうもいかない。その問題もあって今ではル・ボナー製品はシルバーメッキメインに。真鍮素材の金具にもシルバーメッキするようにしている。
真鍮が革に触れる部分は革貼って直接触れないようにしときましょう。
この頃はスイスのリリー社のファスナー使ってた。この頃のリリーのファスナー生地の丈夫さには驚かされる。25年経っても全然生地が裂けてない。その後生地が変更されてからはリリーのファスナー使わなくなったなぁ〜。
革のバッグは接し方次第で永遠の可能性がある。ただそれは稀有で多くは遅かれ早かれ朽ち果てて行く。ただこれだけは言えてる「革のバッグは使う人の思い出を刻む」。そして他人が見たら汚いだけのバッグでも特別になる。
そして修理完了、もう暫くは使えると思う。
最新の素材も好きなんですがやっぱり革なんですよね。雨にあたっても陰干しして形を整えてって作業が好きなんですよ。僕は素人なんで重たい革がまだまだすきなんです。