私も今年8月23日に還暦を迎える。此処の所、自ら作るのは量産品のサンプルぐらいだった。老いは職人としての体力や気力を低下させるし、何より老眼が邪魔する。全盛期のようには集中力を持って鞄を作れなくなってきたなと自覚する今日この頃だった。でも60歳を迎える前に鞄職人ボンジョルノ松本まだ健在という鞄を作りたいと思った。そしてこの大きくて重い棒屋根ボストンを作る事にした。
この鞄は今までブッテーロ革を使い内側に固めの芯材を張り込んでハードな作りだった。棒屋根も三角形に屋根形状させていた。それはそれで迫力満点だったけれど、今回はシュランケンカーフの元厚のしなやかさを出してみたくて、芯材は最低限にして柔らかな質感の棒屋根ボストンに仕上げた。それでも迫力十分。外装のステッチはベルトのステッチ以外は手縫い。手縫いが得意ではないボンジョルノですがこの鞄はしかたない。最大厚15mm(ゲタループ部分)の手縫いは菱切りで開けた穴に針を通す時の締まりがキツくてペンチ片手に一目一目ヒイヒイ言いいながら。
他の仕事もしながらの合間仕事だし手が遅くなっているから、還暦の誕生日までには作れないだろうと予想していたが、作り始めると楽しくて早く完成させる事ができた。精緻とは言えないけれど職人ボンジョルノらしさが出せた鞄に仕上げられたのではないでしょうか。
作っていて楽しかった。まだまだやれば出来るという自信にもなった。私はプロなのでこういう一点モノも販売はします。でも売れなくてお店にいつまでも鎮座していてくれても嬉しいな、税込み864,000円也。買わなくて見に来てください。これからもこの手の実用には向かない迫力ある鞄を、鞄職人確認作業として毎年作れたらと思っています。来年は大割れボストンにしようかなそれともトランク。
ご無沙汰しています。すごく迫力あるバッグですね。
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