テーラースーツをこよなく愛する無償太ダレス関東営業販売部長?のキャリアなN氏が帰神し、今最もご執心のフィッターの銀座の陳さんに頼んで誂えたアイリッシュリネンのブレザーを羽織って来店。フィット感を求めなければ既成のスーツで十分。テーラーで誂えるのは、寝間着を着ている時のようにリラックス出来て、それでいて身体にフィットする愛しい一着を求めて作り続ける。そしてN氏が数多くスーツを誂え続け辿り着いた最高のフィッターが彼女だった。彼女の針はギリギリまで躊躇なく攻める。そして出来上がったブレザーは立体感がありフィットしている。出来上がったすぐは少しきつい感じだが、数日着て行動していると糸の具合が身体の動きに合わせてバランスしフィットしてくるのだそうだ。その寸止めの妙を持つフィッターに出会える事は希有。それほどその世界でも職人芸的な仕事は減っているという。
スマートでふくよかなフォルム。
アイリッシュリネンだから着てるとシワは出る。それもこの素材の味。
(追伸)
スーツにしても靴にしても、フィットする事を価値としてブランド力やデザイン性の価値以外の高価格帯ゾーンの需要がある。しかし、その価値を現実に生み出せる職人は少ないし、宣伝はしていないので出会えるチャンスも少ない。でも特別を知って得た喜びは価格以上の価値を感じれる。それに比べ革鞄の世界は、そいった特別は何だろうかと考えてみた。ル・ボナーの最大のヒット作のパパス・ショルダーを使って頂いている多くのお客様に、たすき掛けして自転車を漕いでも前に落ちて来ないフィット感を褒めて頂けるけれど、それはテーラースーツやオーダー靴の持つ付加価値にはなり得ていない。何だろう?と考えていたら「良質な軽さ」というのが頭をよぎった。革だと相反する部分が多く有り大変難しいファクターではあるけれど、ル・ボナーのユーザーがこれから増々高齢化していくだろうから考える余地は十分ある。時計の世界でも、創業してまだ10年たらずの複雑時計の軽さに価値を求めたリシャール・ミルという超高級なブランドが人気を博したのは予想外だった。革鞄の場合、実際の重さだけではなくて、持ったり提げた時に軽く感じられるバランスとパターンという考え方もある。少し考えてみる事にした。
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