ル・ボナーの一日
不器用な鞄職人
2012年12月10日
2012年も最後の月に突入しております。
今年もお客様たちと楽しく一年を送る事が出来ました。
現在定番品の多くは信頼する職人さんたちに組み上げてもらっているけれど、
私が今年中に終わらせないといけない一点作りや修理品も一杯あってあせっております。
でも一昔前に比べるとこの頃楽しているなとは思っている。
色々なタイプのミシンを使ってきたけれど、結果この上下送り半回転が自分たちに一番しっくりくると分かった。押さえはこんな風に原型をとどめない状態まで削って使っています。なので不安定です。でもそれでも好きなステッチ具合を求めた結果こんな風に。そんな荒馬をコントーロルしながらステッチを縫う。
私はこの仕事を初めて37年になります。
初めて訪れた人はその寂しさにびっくりする六甲アイランドで、
お店を初めてからでも来年の3月28日で20周年を迎えます。
この道一筋でなんとかこの歳まで来れました。
私は職人としても社会人としても大変不器用で、
その為大変四苦八苦しながら遠回りして現在に至っております。
私より素敵なカバンを作れる職人さんはいっぱいいるし、
私の現在置かれている立ち位置だと、
もっと事業として大きくする事が私以外なら容易だろう。
でも才能のない私にとっては現在のこの状態がベストだと感じている。
これからもハミと一緒にカバンを作りながら年老いていくだろう。
自営業なので健康でさえあれば定年はない。
そんな日々の繰り返しが愛おしい。
長く作り続けているとこの手の道具が増えていく。この3倍はある。鍛冶屋さんに頼んで作ってもらったモノから既成の品まで。鍛冶屋さんに作ってもらった道具はやはり全然違う。
私は大変不器用で、何をするにも遅い。
でも不器用だったからこそ鞄職人として今日まで続けられたと思う。
不器用だから何をするにも人一倍努力しないといけなくて、
なので一つ一つの事が人一倍身になるし、
自分自身を過剰評価する事なく、
苦しんで会得したから仕事を愛しく思う事が出来る。
不器用で良かったと今では思う。
鞄作りは芸術作品を作る訳ではないので、
ビジネス的な部分を持ち合わせてやっていかないと、
個人で長く作り続けていく事は厳しい。
その部分に目を瞑る事なく、
自分たちの思いをカタチにする事は出来るはず。
守らなければいけない拘りと本当はどうでも良い拘りとを、
取捨選択しコントロール出来れば。
ただ私の場合その事を悟ったのは50歳過ぎてからだったけれど。
時々今でも手縫いをする。ただ全然手縫いには拘りを持っていない。なので縫う糸は麻じゃなくてビニモ。その方が丈夫なので。でも手縫いは楽しい。
これからも一生懸命楽しみながら、
ハミと一緒にカタチを残していきたい。
ル・ボナーの二人の個性をカタチにして。
創り出す仕事を続けられている幸せを感じながら。
Le Bonheur (19:49) | コメント(0)
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