ル・ボナーの一日
ファーラウトでの一年
2006年03月21日
私は30歳なかばの頃ファーラウトという会社に1年ほど企画で勤めていたことがあります。
この会社は、商社がスポンサーになって、世界で有名ブランドと対等に競える日本の鞄ブランドを構築しようという、高い目標を持った会社でした。資金の面でも、驚くほど余裕のある事業計画で、3年間はどんなに赤字を出しても商社が支え続けるというもので、夢を一緒に構築したいと思い、勤め人になりました。
場所は東京の広尾にあり、ビルの1フロアを使っていました。総勢15人の小さな会社でしたがすべてが贅沢な会社で、私はそれまでも、その後も経験しない夢のような仕事環境でした。先輩のパターンの天才、金田さんと二人で企画の部屋をもらい、そこで型紙作成、サンプル作り、工場との打ち合わせ、素材の吟味などをしていました。必要だと私たちが思った道具や機械はどんなものでも買うことができました。鞄の素材も驚くほど高価なものを海外、国内問わず取り寄せました。そんな中で出来上がった鞄たちは今見ても豊かな表情を持った素晴らしい鞄です。
しかし、夢のようなブランドは夢のまま終わってしまいました。スポンサーの大手商社が倒産し、資金が止まったファーラウトは解散しました。3年続いていれば、黒字になり独立独歩やっていけただろうと今でも思っていますが、バブルの泡の中に夢は消えてしまいました。
私にとってファーラウトでの1年は、贅沢な文化祭でした。仲間と一緒に夢をかなえるために。
私にとっておとぎ話の龍宮城のような1年はこうして終わりましたが、その後の独立系鞄職人として生きてゆく上で、多くの経験と知識を得ることができました。
今、こうして神戸でお店を14年続けられているのも、あの1年は大きな経験でした。
Le Bonheur (21:53) | コメント(0)
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