ル・ボナーの一日
独立系鞄職人の独り言(2)
2006年02月02日
久しぶりに総手縫いの鞄を作り始めています。
鞄の手縫いは、靴やスーツと違って見せる手縫いなので、作り手の個性がでてしまいます。一目一目気を使って、それでいてリズミカルに縫ってゆきます。
手縫いは経済的なことを考えなければ、鞄職人にとって楽しい作業です。鞄を作る喜びが味わえて初心に帰れます。しかし手縫いの製品を作りつづけてプロとして鞄職人をつづけてゆくのは非常に難しいと思います。一個の鞄を作るのに時間がかかりすぎて、それを正当な価格で売った時、99パーセントの人は高いと思うでしょう。一番効率よくシステム化して手縫いをしているエルメスの製品の価格は適正とは思いませんが、その半値であれば適正だと思います。エルメスの半値で作りのしっかりした手縫いの鞄を独立系鞄職人が作ってもそれを買おうとする人はごくわずかです。倍の値段のエルメスの鞄を買う人は多いのですが。
手縫いという技術を継承してゆくのは大事な事だと思います。しかし若い独立系鞄職人の人たちは、そのこと以上に作りの良い鞄を適正価格である程度の数をまとめて作れるシステムを構築してほしい。それができれば、無理なく好きな鞄作りをつづけてゆけます。。オリジナリティをもったデザインをして世に問う余裕も生まれてくると思うのです。
美しい手縫いをするにはどうすればいいか、完璧なコバ磨きをするにはどうすればいいかといった技術的な工夫はしつづけなければいけないし、職人にとって楽しい作業です。しかし独立系鞄職人の場合、材料仕入れから生産、販売まで作るだけではなく、全部しなければなりません。トータルな中で鞄作りの日々を見つめることが大事だと思うのです。
30年遠回りをした私の実感です。
Le Bonheur (21:43) | コメント(4)
Comments
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お世話になっております。
私の無理を聞いていただき、誠にありがとうございます。
お仕立て上がりを心待ちに致しております。 -
久しぶりにブログを読み返しています
もう5、6回めですが、このコメントをされるオーナーの考え方が好きです
人柄が垣間見えるようで、尊敬します
職人として。
ぜひ急がなくて良いので、納得の仕事
してください。
勝手なお願いですみません。 -
たなかさん
ありがとうございます。
良いカバン作るようがんばります。ゆっくりですが。
ル・ボナーさんのお店に行くようになって、色んな革製品が目につくようになってきました。写真の革が、どんな鞄になるのか、心待ちにしておきます!