ル・ボナーの一日

顔料仕上げのコバ処理

2010年02月19日

10%E5%B9%B4%EF%BC%91%E6%9C%88%20178.jpg 太ダレスの本体で一番厚みのある部分のコバ処理中。 革製品の場合、裁断した断面は収まり良くするために処理しないといけない。 今まで染料を塗って磨き上げる処理方法を主に使っていたル・ボナーですが、 厚みのあるコバの場合は顔料での処理の方が傷みにくいと思うに至った。 今まで顔料での仕上げを使わないでいた理由は、 既存の顔料を厚塗りした仕上げの鞄のコバの表面に塗られた顔料の被膜が、 一年も経たないうちに剥げ落ちた品を何度も見てきたのが大きな理由。 しかし下処理の仕上げをきっちりしてから顔料を革の断面に染み込ませる工夫をすると、 染料仕上げにも負けない仕上がりと、染料仕上げだと使い続けるとコバの断面の重なりが分離するという避けて通れない問題が緩和される。 そんな理由から顔料での仕上げもするようになった。 顔料を使うようになったきっかけは、エルメスのコバ。 顔料で処理しているのに、その顔料がはがれにくいのに驚いた。 その上染料だと仕上げると黒ないしは濃茶のコバ色になってしまうのに比べ、 顔料だとカラフルなコバの色も可能。 シュランケンカーフなどのカラフルな色の革にはカラフルなコバ色が似合っている。 顔料での仕上げは染料での仕上げより美しくないという固定観念が今まであったけれど、 綺麗な仕上げは、顔料でも染料でも下処理次第だと確信した。 綺麗に収まって剥離しなければ顔料仕上げの方が利点は多い。 特に厚みのある重なった断面の場合はより効果的だ。 その断面に芯材などの異素材も一緒にコバ処理する時などはなおさら。 10%E5%B9%B4%EF%BC%91%E6%9C%88%20176.jpg コバの断面を切り揃えて、豆カンナで角を削り、その後何種類かの荒さの違う紙やすりで断面を滑らかに揃える。ここまでは染料であれ、顔料であれ、収まったコバにするには同じ作業。 その後顔料磨きは顔料を塗布して熱と紙やすりを使って滑らかにし、その工程を収まり良い状態になるまで繰り返す。美しく仕上げるには近道はなかった。 ただ顔料での仕上げの場合、厚塗りは避けたい。厚塗りは剥離を助長させる。 あくまで顔料は薄塗りで、革の断面にしみ込ませる仕上げが頑強。 そんな風に太ダレスのコバ処理を、今回から顔料仕上げでしています。

Le Bonheur (21:33) | コメント(6)

Comments

  1. orenge より:

    エルメスのものは顔料仕上げが多いですね。私は,顔料仕上げが厚塗りではがれやすいという理由で
    できれば避けたいと思ってました。「ル・ボナー」の顔料仕上げは固くなく自然な感じでいいですね。ハミさんの特製ブレンドと以前お聞きしましたが・・・
    Re: orenge さん
    コバ処理はハミが上手です。染料磨きとの違いが判別しにくい顔料磨きが良いですが、大変手間がかかります。
                            ル・ボナー松本

  2. たけちゃん より:

    前回の記事に引き続き、ダレスバック製作日誌ですね。待ちに待った記事です。過去の膨大な記事の中でも案外ダレスバックの細かな記述が少ないので、大変興味深く拝見しています。青ステッチの、内部真っ赤の鞄が写っています。これかな?などと思いながら毎日2、3度拝見したりしてます。こばというのは革の断端を指すのですね。細かな仕様は常に進化しているということですねえ。気に入ったスーツを着てダレスバック、内部は小物をピッコロに入れて、スーツの内ポケットには気に入った万年筆。楽しみにいたしております。嬉しい楽しみと同時に、これを注文して買うことを何時告白するかという不安が押し寄せる今日この頃でもあります。
    Re: たけちゃん  さん
    アップの黒革にブルーステッチはたけちゃんのです。もう少しお待ちください。奥様には大丈夫です。ブランド品とは違って価格は何とでも言えますから。はい~。
    次回泊まりがけの東京出張時にはぜひ「学士会館」に泊まってみてください。レトロな風情が良いですよ。
                              ル・ボナー松本

  3. こんにちは、一度ご無理申し上げたメールをお送りさせていただきました、アルテレッツァの木戸です。はじめてコメントさせていただきます。
    顔料と染料の大きな違いは粒子の大きさだと思います。
    水に溶けるくらい細かな粒子が染料だと思いますが、粒子の大きさがコバの丈夫さに影響を与えるとは思えなく(染まるかどうかは革の繊維に浸透するかだと思いますが)むしろ通常の顔料の粒子を接着させる溶剤(接着剤)が丈夫さに影響を与えるのではと思っています。
    従って、コバを染料で染めてその上から丈夫なコーティングを施せば耐久性のあるコバになるのではと思います。
    革に浸透するコーティング剤はエナメルですが、なかなか処理が難しいので、研究中です。
    厚いクロムなめしの革や、色の乗りが悪い場合や、芯材を出したコバを処理する場合は、粒子の大きな顔料をのせて処理するのがいいですね。
    コバ処理は悩ましい部分なのでいろいろ精進したく思っています。
    失礼いたしました。
    Re: アルテレッツァ さん
    同業者の方からのコメントは刺激になります。
    ありがとうございます。
    どちらにしてもコバ処理は傷み難くて自然な仕上がりになると良いと思っています。一時蜜蝋を熱で染み込ませながら強度と光沢を維持する処理をしていた時期もありましたが、これは手間がかかり過ぎて大変でした。でも綺麗でした。その仕上がりを顔料で仕上げれたらと思っています。
                             ル・ボナー松本

  4. mee より:

    初めまして。
    突然ですいません。
    だいぶ前の記事のようですが、初めてのドイツシュリンクでコバを仕上げるにあたって、色々と悩んでいたところ、ボナーさんの記事を見つけまして、コメントしています。
    顔料だとひび割れするイメージが強かったのですが、記事を読みまして、試してみたいと思いました。ただ、あまり、ギラギラしたものは好みでないので、オーリーを使っています。
    ただ、オーリーには、カラーがありません。
    厚かましいとは思いますが、カラーの揃っている顔料を教えてはいただけないでしょうか?
    Re: ボンジョルノ より
    豊島科学あたりのが良いとおもいますが。
    染料でも顔料でも下処理が要は大事ですよね。

  5. mee より:

    回答ありがとうございます。
    さっそく試してみます。
    本当にありがとうございます。
    下処理、大切ですよね。自分がつくるようになって、こんなにも手間がかかっていたのかと、つくづく感じています。
    ときどき、切りっぱなしデザインのもので、息抜きしたりして。。。

  6. mee より:

    豊島科学の顔料が手元に届きました。早速試してみました。
    いい感じです。カラーバリエーションもあって、嬉しいです。
    ご紹介していただいて、本当にありがとうございます。
    Re: ボンジョルノ より
    素敵なカタチ作ってください。

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