ル・ボナーの一日

思い出がしみ込んだモノ

2008年04月21日

%EF%BC%91%EF%BC%90%E6%9C%88%20484.jpg 今私は毎月の恒例、ベルト作りに着手しております。今回はいつもより注文数が多く、ちょっと早めに作り始めました。頑張って早く作り終えないと。 私の仕事机の上はいつもゴチャゴチャです。整理整頓された状態は今だかつて見たことがない。全て収納して机の上はすっきりしていた方が仕事がはかどると皆さんは思うでしょうが、この状態が私にとってベストなのであります。時計や万年筆たちが仕事する時になぜ必要があるのと問われれば、なくても鞄作りはできます。でも朝一番すべてのリューズを巻かなければいけない時計たちや、インクをいつも満タンいつでも書ける状態の万年筆たちに見守られながら、私は仕事がしたいのであります。仕事に集中してふと目線を上に向けると愛しい時計たちや万年筆たちが見つめていてくれると、頑張るぞぉ~!と気合が入る訳であります。 ル・ボナーはカバン屋です。時計屋さんでも万年筆屋さんでもありません。 しかし時計や万年筆を持ち込む人たちが多い。なぜなんだろう?。でも楽しいからまあいいかぁ~。 %EF%BC%91%EF%BC%90%E6%9C%88%20500.jpg ダンディーT氏が仕事で来神し、ル・ボナーに顔を出していただいた。 ル・ボナーはかばん屋です。だのにボロボロの時計の修理を頼むT氏。なんか変だけれど、私はその時計を水谷時計修理工房に持ち込む事を承諾した。 その時計は今年還暦を迎えるダンディーT氏が45年前中学生の時に、お父さんに買ってもらったセイコーファイブ・スポーツ。T氏の思春期から青年期を共に生きた時計。学生の頃はこの時計をしたまま野球なんかもしていたそうで、見るも無残な状態。でも壊れずに今も時を刻んでいるのです。この時計を復元したいと思ったT氏の思いに共感する私。アンティークの奇麗なセイコーファイブ・スポーツは2~3万出せば買える。でも青春を一緒に駆けたこのボロボロのセイコーファイブ・スポーツが復活することが大事なのです。私が一肌脱ごうじゃありませんか。 お父さんやお祖父さんから譲り受けた時計を丁寧にメンテしながら使う紳士。見るとグランドセイコーのファーストモデル。70歳を過ぎた老夫婦。ご主人の時計は50年前に結納返しの品で、ダイヤルにシミが滲むオメガのコンステ。いくらいっぱい時計を持っていても、高価な時計を持っていても、思い出のしみ込んだ時計にかなわないと思う。ダンディーT氏にとってのそんな時計が、このボロボロのセイコーファイブ・スポーツ。 %EF%BC%91%EF%BC%90%E6%9C%88%20505.jpg 1972年に今はなきパイロット東京工場で作られた「エリート」 一緒にフルハルターの森山さんのところでパイロット823プランジャー・コースニブを極細に研いでもらったSさんがニコニコしながら来られた。 30数年前最初の給料で買ったパイロットの「エリート」。それから時が過ぎ、可愛い奥様と結婚し、子供が生まれ、その幼子がこの思い出の万年筆のペン先を畳に何度も突き刺して遊んだため、ペン先がグニャァ~と曲がってしまって使えなくなり、机に閉まっていた。そのペン先がグニャァ~と曲がった思い出の「エリート」をpen and massege.の吉宗さんのところに持ち込めば復活するのではと思い持ち込んだところ、治ったのであります。きっとモンブラン149を購入した時の感動より、このグニャァ~とペン先が曲がった「エリート」がまた書けるようになった事の方が感動的な出来事だったのではないでしょうか。 モノって、思い出がしみ込んで特別なものになるように思う。 アンティークなモノが大好きです。でも一夜漬けのモノ好きの所有物は、思い出はまだしみ込んでいない。

Le Bonheur (22:13) | コメント(5)

Comments

  1. クワハラ より:

    こんにちは。
    先日は有難うございました。
    素敵な鞄を手にして、二人とも大満足でした。これからのお出かけに重宝しそうです。
    たくさんの愛着ある物達との暮らし・・・捨てられない夫婦の暮らしはまさに物との共存です。
    でも、それらはただの物では無いのですよね。その存在が、月日と共に癒しや、安心になっているから。父の思い出の染み付いた時計などは、見ているだけでほっとします。うまく言えなくてごめんなさい。
    ハミさん
    お風邪はいかがでしょうか。
    無理しないで下さいね。
    いつか、皆さんでイタリア(!?)を旅する事が出来たらなんて素敵なんでしょう。
    想像するだけで、自然と微笑んで
    しまいます。
    その時の為に、キューブボストンを手にいれなくっちゃ。ああ、大変。
    ではでは、又お伺いします。
    次回は、おしゃべりに・・・。

  2. ル・ボナー松本 より:

    クワハラ さん
    思い出のしみ込んだモノたちと、これからしみ込んでいくものたちもい~ぱいのクワハラ家に、一度お邪魔したい願望いっぱいですが、時々ル・ボナーで見せていただければ十分ですよね。その量と質を想像しただけで、怖気づきます。
    一緒にイタリア行けたら最高ですね。長期計画で「ル・ボナー御一行ヘトヘトワクワク イタリア珍道中」を画策しようじゃありませんか。確定したら絶対クワハラ夫妻は参加してください。ご主人にやはりイギリスよりイタリアの方が良いなぁ~と言わせてみせます。

  3. taka より:

    写真にとるとひどい。
    がさつで、もの大事にしないで「使い倒す」自分を反省しています。
    でも、あちこちにぶつかった「向こうキズ」と思うことにします。

  4. クワハラ より:

    こんにちは。
    是非、我が家へいらして下さい。
    ただし、想像されるような、立派なものではありませんよ。
    たとえ、人様からみればがらくた同然の物でも、自分には宝・・そういう世界ですから。

  5. ル・ボナー松本 より:

    taka さん
    このボロボロの時計がどこまで復元するか楽しみです。同じファイブ・スポーツの復刻版(海外生産品)だと1万円ちょっとで買えます。だのにこの向こうキズの年代物にそれ以上の修理代がかかっても直そうと考えているもの好きなtakaさんに乾杯~!。楽しいじゃありませんか。
    クワハラ さん
    そんな風に言っていただけると、私は本気でシャーロキアンハウスに行ってしまいますよ。多くのひとにはガラクタ、でも自分にとっては宝ものたち。そんなモノが私も大好きです。十手もあるんですよね。凄い。

Leave a Comment

入力エリアすべてが必須項目です。メールアドレスが公開されることはありません。

内容をご確認の上、送信してください。

アーカイブ