ル・ボナーの一日
経年変化(エージング)
2007年06月02日
今日昔からのお客様が2年ほど前に購入されたミネルバリスシオのグレー色の枠ポーチを持って来られました。良い状態でエージングしていました。
ポーチの下に敷いている革がミネルバリスシオのグレー。違う色のようです。
色止め加工をしないバケッタ製法のミネルバリスシオの革は、薄い色ほど別の色かと思うほどの経年変化をします。面白い革です。
同じミネルバリスシオで作った枠ポーチがファスナー交換の修理でル・ボナーの工房に里帰りしていますが、こちらは経年変化がうまくいっていない。理由はほこりです。
土ぼこりなどが多い場所で使い続けた場合は良い感じの経年変化をさまたげてしまうようです。そういう場所での使用の多い人は出来るだけ多く水拭きしてほこりを取り去る努力が必要のようです。
エージングが顕著に出るのはタンニンなめしの革です。クロームなめしの革の場合でも良くなめされた表面コーティングしていない革の場合お手入れを上手にするとエージングします。
しかしバタラッシー社のバケッタ製法の革ほど均一なエージングをする革とは初めて出会いました。特別気を付けて使わなくても満足な経年変化を楽しめます。
エージングというのは革という素材の大きな魅力ですが、それは年をとっていくという事ででもあるのです。
時計や万年筆が次世代に手渡す事が出来るモノであるのに比べて、革製品の大部分はそんなに長い寿命は期待できない。大正時代のトランクなどは現代でも存在しているけれど、その革は弾性も消え革は生命力は失っています。
しかし生地よりは寿命は全然長い。生命力が金属と生地の中間に位置する素材です。
そのはかなさと味わいが魅力の素材です。
革鞄は使う人の分身のように一緒に年齢を重ねて行きます。
愛しい素材です。出来るだけ長く元気な状態で頑張って欲しい。
永遠を信じて作るし、永遠を求めて使う。それでいいと思う。
Le Bonheur (22:36) | コメント(5)
Comments
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orenge さん
革に合う金属は真鍮ですね。経年変化が革と同じペースで進行します。銀色だとシルバーがいいかんじなのですが硬度がないので使うのに躊躇があります。
使い手の接し方で違いが出てくる素材は魅力があります。 -
エージングバッグのオーナーの阪田です。いつも楽しいコメントをありがとうございます。一瞬、松本さんや、ハミさんに言われるまで自分のバッグの元の色をすっかりわすれておりました。みなさんがコメントされているとおり、革には人を幸せにする何かがあるんですよねぇ。お店に並んでいるバッグはみんな威風堂々として誇らしげに並んでいますね。人がバッグを選んでいるようにみえますが実はバッグに選ばれているようにも思えてきます。
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そうですね。真鍮が一番です。なんともいえない経年変化をします。真鍮の靴べらがスキです。机の上に置いたときの音がなんともいえません。
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坂田さん
革製品は持ち主と一緒のペースで老化していくのがベストではないかと思っています。
持ち主の思い出が沁み込んで違う経年変化をするのかもしれません。坂田さんのポーチは良い感じで変化してまぁ~す。
私もこれと同じものを所有しています。ただ,たくさん鞄があるため,エージングといえるほど経年変化をしていません。鞄よりも私自身の経年変化のほうが進みつつあります。ジュラルミンのバッグはカメラ用に使ってますが,これはショックと外界の状態から守るためです。「ちょっと違うな。」と体が感じてます。人間が持つ物は,やはり革が一番相性がいいと思います。動物同士の肌はなかよしということでしょうか。金属で動物の肌に近い感覚のものは,色合いや肌触りなどからYGやPGのような気がします。