京都の御婦人からこの50年代初頭のキヤノンのバルナックライカと見間違いそうなレンジファインダーカメラを頂いた。お父様が使われていたカメラでもう誰も使わないからと。しかし外観は極めつけにバッチグーなのだけれど、操作が難解でその上レンズを外してみると油漏れしていて修理しないと使えそうにない。それでボンジョルノカメラ博物館の飾りとして長らく鎮座していた。あまりにもレンズは程度が良いので、レンズだけでも使えればと思っていたけれど、ねじ込み式のこのレンズのマウントは何なのか分からないまま使う方法論を探る事なく時が過ぎた。
だが先日カメラ関係に詳しい顧客の方が、このレンズはライカLマウントである事を教えて頂いたら使わないではいられません。早速L-M変換マウントアダプターを入手して、現在愛用しているカメラたちで使ってみる事に。ネットでこのキヤノンSERENAR 50mmF1.8の素性を調べてみました。キヤノンが初めて自社内製造した名玉。当時のズミクロンやニッコールより一段絞ると上の性能らしい。このレンズの設計者の伊藤宏氏は後に紫綬勲章を頂いた技術者。あの御手洗毅会長時代は常務で、その会長と激論の末退社したという気骨ある人物。キヤノンの礎となった人とレンズ。50年代当時の価格が28,000円。現在の価値換算すると90万円ほど。
それにしてもこの個体は外観は勿論、レンズも濁り一つなくて埃も確認できない抜群のコンデション。そしてそして装着して撮ってみました。
まずα7RにL-MとM-ソニーEの2つの変換マウントアダプターを介して装着してみました。あまりの外観の素敵さに見惚れてしまいました。現行のレンズでこれほど金属の質感が見事なレンズは存在しないのではないでしょうか。その代償に小さなレンズなのに大口径のキヤノンの現行のLレンズ並みの重さ。でも見栄え良ければ我慢出来る。
ワクワクしながら撮ってみました。まず被写体を開放で撮ろうとピント合わせしてみると、これが現在のレンズたちに比べてピンの山がつかみ難い。それは絞ってもそんなに改善しない。そして撮れた画像はヌケがイマイチでカラーの色が淡い。それを味わいと言えば言えない事はないけれど、現在のレンズに比べて光学的に制約が多い。しかしそれでも使いたいと思ってしまうオーラーを感じる。
モノクロはほどほど良い感じに撮れたので、このレンズはこのライカM3にISO100 の黒白フィルム入れて少し絞って撮ると楽しいはず。今撮っていますが36枚撮り切ったら現像して撮った写真を公開します。デジタルな便利を求める時代に、少しアナログで手間を楽しめると違った世界が広がる。来月の大人の遠足&撮影会はこのSERENAR50mmF1.8とライカM3のコンビがメインに決定。
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