ル・ボナーの一日
棒屋根ボストンバッグ
2006年03月02日
昨日雨の中、九州から来ていただいたお客様がこのボストンバッグを買ってくださいました。
私にとって特別思いいれの強いデザインの鞄です。ル・ボナーを代表する鞄でもあります。
このタイプの鞄の名前は、日本では棒屋根鞄といい、イギリスではハンティングキットバッグと呼ばれています。ファスナーがなかった頃の、トランク、大割れ(ブラッドストーン)などと並ぶ、代表的な旅行鞄です。
この鞄を作りたいと思った時、まず最初にぶつっかた問題はトップに使う金具です。日本製ではいいものが見つからず、海外の金具のカタログから、フィレンツェの老舗金具屋、OBIのものを見つけました。
当時、インターネットも普及してなくて、知り合いの商社を通して個人輸入しました。まとめて買わなければならず、まだまだこの棒屋根の金具の在庫はあります。独立系鞄職人は良い金具の入手では特に苦労します。
表に見えるステッチはベルト以外は手縫いです。手縫いにこだわっているわけではないのですが、この鞄の場合は強度をだすために必要でした。ベルトを通すループはゲタを履かしています。手間なのですが気に入っていて、ル・ボナーの価格帯の高い鞄にはそうしています。
この棒屋根鞄は重くて、使い勝手の悪い鞄です。ル・ボナーでも年に1.2個売れるくらいです。
それでも、この鞄は作り続けます。あるライターが鞄を特集した本の中で、棒屋根鞄を評して下記のように書いていました。
今回の取材を通じて、非常に沢山のカバンを見る機会を得たが、そんななかでもっとも印象に残ったものがこの棒屋根型のカバン。カバンというものが、その革や金属や布の覆いのなかに、人間の移動と結びついた夢や、未知の可能性への期待を包みこんでくれるものであるとするならば、まさしくピッタリのカバンであると言っても言い過ぎではあるまい。持っているだけで、自由にイメージトリップが楽しめるカバンと言ったらオーバーだろうか。
買われたお客様のお孫さんが使いつづけていたら、なんて素晴らしい情景か。そんなことを想像しつつル・ボナーの棒屋根鞄は九州に旅立って行きました。
Le Bonheur (10:16) | コメント(1)
プリントアウトし通勤かばんの中にしのばせ、枕もとにもう一部をプリントアウトし、寝る前に何度見たことでしょう。夢の中でこの鞄を持って、家族で何度地球を回ったことでしょう。
とうとうこの鞄と同じ時間を刻んでいけます。大事な時計と一緒に。でも、いい味になっているのは、くやしいけど、息子いや孫のことだろうか。。