ル・ボナーの一日
絶妙なスタンスで「ル・ボナー」
2012年08月21日
現代社会では荷物を入れるだけならナイロンバッグで十分。革鞄をあえてチョイスするお客様たちは、荷物を持ち運ぶ為の道具としてだけではない価値を鞄に求めているはず。特にブランド品でない私たちのような個人が作る革鞄に魅力を感じる方々は、特別にその価値に対して強い思い入れを持っておられる。その期待に応えられる製品作りを個人の工房はそれぞれぞれしている。
ル・ボナーもその部分は同じだけれど、造りへの強い拘りからは解放され、創り(カタチ)の中に特別を求める今日この頃。手縫い鞄のような職人芸ではない既成鞄に近い方で「特別」を創造したいと思ったりしている。
現在既製鞄の多くはデザイナーが絵を描き、工場が型紙とサンプルを造り、何度かの再考を重ねてから量産をするシステム。想定価格は設定されているので、当然工場側はその中で利益を生み出す合理的な縫製方法を選択してサンプルを作ろうとする。そういう関係から合理的な魅力を求めた既成鞄が大部分生まれてくる。使い勝手が良さそうに見える鞄。機能的に見える鞄。クラシックな風情を感じさせる鞄。豪華に見える鞄 etc。
でもその生産手順からは本当の豊かさが見えてこないように思う。機能的な生産システムは構築出来なくて無駄は多くあっても、出来上がった製品が「幸せの果実」のような。その事において最も重要な要素はパターン。パターンの工夫で量産品でも多くの既製品との差別化ははかれるはず。デザインする側が量産する職人さんの立場を考慮しながら(この部分が特にない)サンプルまで作ったとしたなら(サンプルを作る組織が最もリスクを負担する事になる)可能だ。でもそれを避ける傾向が強くある。
ただその現状があるからル・ボナーの革製品の立ち位置がある。七転八倒しながらこの業界で色々な立場を経験してきた過去が活きる。組織の中での企画デザインから請け負いの量産カバン(レノマというブランドのカバンだった)の組み上げまで色々な事を経験した。その事で信頼する職人さんと作りまで綿密に話しながら作れる今がある。
現在3人の職人さんにル・ボナー製品を量産してもらっている。それぞれ弱点を持っている。早く作れない職人さん。マイペースで納期遅れは毎回という職人さん。沢山は作りたがらない職人さん。今の日本の鞄業界では敬遠されがちなタイプの職人さんたち。でもル・ボナーにとって大事な共通する部分がある。3人とも仕事が丁寧だという事と、私たちとの共同作業を楽しんでしてもらえているという事。その職人さんたちとの良好な意思疎通から、ル・ボナーらしさを持った革製品が生まれてくる。これはありがたい事だとつくずく思う。
このシニアに人気のやわらくて軽い(430g)ショルダーバッグの「ペーパームーン」の作り始めの時は楽しかったなぁ〜。私が作ったサンプルと型紙を職人さんに渡した時は、「こんな複雑なパズルのようなパターンのバッグ作れない」と断られた。でもそのパズルが解けたらすごくスムーズに数が上がるバッグだからと説得して挑戦してもらった。そしてやってみると組み上げで時間を使うコバ処理とか見える部分のステッチが最小で済む仕様の為、慣れると驚くほどスムーズに作業が進む。パターンを工夫する事でお互いハッピーに作れた例。これは絵型だけ提示する方法だと出来上がらない。
この内縫いのふくよかな曲線はル・ボナーらしさ。エルメスのプリムと同じ形の「キューブ」だけれど、並べるとまるで別物。ある意味プリムより魅力あるフォルムだと私たちは思っている。そのル・ボナーらしい内縫いは、まだ私たちの元から離れられないでいる。この技法が量産でも可能になれば凄いと思うけれど、これはそう出来なくても良い気もする。
Le Bonheur (06:41) | コメント(2)
Comments
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今日はお忙しい中、いろいろ拝見させていただきありがとうございました。
和歌山から、ル・ボナーさんのHPとブログを穴が開くほど拝見しておりましたが、現物はもっと素敵でした。
いただいた、ペンケースのバイオレットと、キーホルダーのブルーの前で、うんうん悩んでいます。
今日、悩んでいたバック達のブルー系(最後のお写真のキューブです)のお色身は、ジーンブルーでしょうか?スカイでしょうか?
過去ブログをさかのぼると、パパスショルダーで、ジーンブルーやスカイのものもおつくりでしたが、その再登場は まだまだ先でしょうね・・・
Re: ボンジョルノ より
昨日は来店頂きありがとうございました。
気に入って頂けた色はジーンブルーです。
パパスでも使うと思いますが今年はないかなぁ〜。
いつもルボナーさんの鞄でお出かけ。。特に ディプロマがヘビーローテーションな為、、 久しぶりにライムグリーンのパパスを出してきました。バナナのキーホルダーを付けてまだまだ真夏気分☆☆☆と思っていたら…娘に「それ…クラゲ!?$%*£§や…」と……(-.-;)
真夏気分で間違いなかったけど…世の中半分理解できなくなってきたお年頃。一緒に歳をとってながーく付き合って貰える革物に出会えて ホントに嬉しいデス☆☆☆
お取り置きのしたままですみませ~ん。9月に入ったらポーチピッコロをお迎えに参ります。
Re: ボンジョルノ より
いつも楽しいコメントありがとうございます。
トープのポーチ・ピッコロがお待ちしております。