ル・ボナーの一日
TAKUYA君の作る革製品にオートクチュールを見た。
2012年03月01日
親しくしているお客様がTAKUYA君にフルオーダーで頼んだ、ショルダーバッグを提げて来られた。シンプルだけれどTAKUYA君でないと生み出せない個性が伝わる上質なショルダーバッグだと思った。表はイタリア製のクラシコバッファロー、内装にはペッカリーでも特別上等なペリンガー社製。ショルダーはクロコダイルの贅沢仕様。それをオール手縫いで仕上げたソフトショルダー。カブセ中央部分を横断する掬いの手縫いが特別感を醸成する、身体にフィットする素敵な佇まい。このバッグを注文し出来上がるまでの過程をそのお客様から聞いた。まさに作り手と注文主のバトルだったそうです。試作をし変更点を洗い直しながら、作り手のTAKUYA君と一緒に特別なカタチを生み出したという満足感をその注文主は感じる事が出来たと言っておられた。
その制作過程をお客様から聞いていて、TAKUYA君のオーダーメイドはビスポークというよりオートクチュール的だと思った。オートクチュールとは既成服では使えない素材や縫製方法を駆使して作る一点モノの高級服。数百万円の価格が当たり前の世界。それでも注文主の思うままには作ってもらえない。デザイナーと注文主との真剣勝負から生まれる特別な一着。そのオートクチュール的かばん作りをTAKUYA君はしていると思った。
モノ作りを生業とする時その作る品にかかる労働時間を適正に計算し,価格にフィードバックする必要がある。特に一点モノの場合、打ち合わせ時間も、パターンを制作する時間も、サンプル作りも、全て注文主に販売する一点の為に費やすのだから、それらを数に分散できる量産品とは比較にならいほどの時間をその一点の品に費やす事になり価格はそれなりにする。しかし多くのオーダーメイド制作をする独立系鞄職人は適正な請求を出来ないでいる場合が多々ある。でもその事は作り手は勿論注文する側においても不幸な事だ。無理な価格設定でモノ作りを続けると継続出来ない。技術的向上心や豊かな創造力を発展させる時間も持てない事になったりする。
TAKUYA君の作る革製品は彼しか出来ないオリジナルな作品を創造し、それをオートクチュール的な販売方法で注文主と格闘する。その結果注文主が満足感を感じてもらえたなら、価格も納得してもらえる。その為の技術力と感性の進化を彼の作り出したカタチの中に見た。
彼の作り出す革製品と販売方法に刺激を感じています。
Le Bonheur (23:05) | コメント(2)
Comments
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そうですね。我々消費者も価値を正しく理解し,正当な対価を支払うのが理想。そのためには,理解者を増やしていくしかないのでしょうか?うまく良い意味でのブランドが確立できるといいのかな?
そうそう,EOS5DmarkⅢが気になります。
Re: ボンジョルノ より
好きなモノ作りしながら普通に生活出来る収入を得る仕組みを構築する事がなかなか出来ていない場合が多くあります。それをお客様も満足出来る方法で変えていかないと自己満足だけで続かないと思う訳です。
EOS5DmarkⅢ出ますね。気にはなっていますが、もう重いのは〜。でもきっと良いだろうなぁ〜。
松本さん、この前は新幹線でお邪魔した西山です。
既製品でもまあまあ満足出来るレベルの製品が街に溢れる日はいつ来るのでしょうか?
「オーダーメイド制作をする独立系鞄職人は適正な請求を出来ないでいる場合が多々ある。」というのは、食べて行くための労働収入の保障を求めているだけにすぎない。(確かにつくって下さい。お願いしますという気持ちはありますよ。つくれませんから。)そこに、創造とひらめきはあるのでしょうか?(独立系鞄職人は年にいくつ新作発表してますかね?)私から言わせれば、ある意味無料でアイデアを進呈している訳ですから、適正価格、もしくは高いくらいではないでしょうか?それを100パーセント具現化出来る能力もあるのですかね?作り手から先手を打って常に多くの新作を出すようでなければ。半歩先を行く創造、発想が多く降ってこないと!それが飯の種でしょう。その反面、確かに食べて行くためにはしょうがないでしょうし、経営考えたら松本さんのおっしゃる通りですけどね。
Re: ボンジョルノ より
貴重なご意見ありがとうございます。ただ新しいカタチを独立系に要求するのはちと違うのではないかと思います。新しいカタチを求めるのは既成のカバン作りをしているメーカーや問屋の方だと思うわけです。靴を独立系にフルオーダーで頼むと30万円以上したりします。でもそれは市民権を得ていたりします。それに比べて材料も全然多く必要だし制作時間もかかっているフルオーダー鞄はそうはいけてない現状です。どちらもお客様の希望にそった保守的な製品作り、言い換えればデザインというより作りの工夫に重きを置いて作っているのは同じですから、靴を作る価格設定と同等の価格設定が市民権を得る方法論をもう少し考える必要があると思う訳です。今度来店された時色々お話しいたしましょう。