久しぶりに万年筆の事。
此の所、万年筆菌は落ち着き久しく増えていなかった。重病患者になる事なく開放されるのかと安心していた。ただ嫌いではないので、親しい万年筆愛好家のお客様方にはサービスでキャップレス万年筆の革巻きなんぞをして楽しんでおりました。
現行のパイロットのキャップレス万年筆を一度使ってみるとその魅力は十分。ただチープなデザインと質感が寂しい。そしてグリップ感が今一で書いてて滑る感覚を覚える。この事をカバーするのに革巻きは最適だ。そして愛着を持つ事が出来る。
そんな私が驚きの事実を知ってしまった。一ヶ月ほど前、萬年筆趣味仲間のUさんが取り出した見慣れぬ多面体軸のキャップレス。万年筆趣味が発病して10年経たない私は知らなかった。90年代のキャップレスのフォルムの美しさに愕然とした。デザインは眼中にないパイロットだと思い込んでいたのに、これはラミーよりデザイン性を感じた。機能は他の追随を許さない完成度。もう万年筆は増えないだろうと思っていた私もこれは欲しいと強く思ってしまった。すぐにヤフオクで検索したが90年代のキャップレスは出品されていなかった。そして多くの先達に「90年代のキャップレスを手に入れたい」と呼びかけた。見せびらかしはしても譲ってくれない方もいたけれど、呼びかけに応えてくれる方々もいた。
まず入手叶ったのが、この95年製マットブラックタイプの14金ペン先。これは90年台のキャップレスでも特に貴重なタイプらしい。トップからクリップへのの流線型のフォルム、多面体軸のシャープな美しさ。豪華さを着飾った限定万年筆などではなく、普及品の万年筆でこの美しさに脱帽です。
そしてそして、その後予期せぬ幸運が。関西の親方と呼ばれる万年筆趣味の達人に90年代のキャップレスが気になっている事を話すと、キャップレスマニア(そんなコアな人たちも存在するんだ)垂涎の品を持っているけれどそれは手放せないと。でも見たいと言ったら翌日持参頂いた。98年製の輸出用NAMIKIブランドのバニシングポイント(海外のキャップレスのその頃の名称)。鮮明なグリーンの多面軸に鈍いシルバー色のトップが映える。これは素晴しい。なめるように見入っていたら、そこまで気に入っているなら譲ると。ええぇ〜嬉しさ最高値。そして私の元へ。
私の万年筆趣味の山は二度あった。一度目はアウロラ85周年レッド「マダム・モニカ」入手までの紆余曲折。そして50年代のモンブランに魅了された一時期。その後年数本増える程度に沈静化していたが、90年代のこのキャップレスが第三の山になる予感。今週末にももう1本増える。90年代のキャップレスが増殖するのは、元々普及品だからまだ可愛い。それが他にも広がるのが怖い。
でも他にも広がったぁ〜。初めてのモンブラン149。太軸は書き難いからと目を瞑って避けていた最高峰。しかしこの70年代後半の14C極細の書き味に参った。そして加わった。149はこの1本で終わりと今のところ思おうとしている。やっぱ万年筆は面白いけど怖い。
8月15日にお伺いし、緑色の紐財布を購入させて頂きました。東京に戻って参りましたが、何度も触ってはうっとりしています。マウスパッド、香りも大きさもマウスの滑りも最高です。本当に有難うごっざいました。プティトートを心待ちにしております。黒かトープで迷っておりまして、ときどき考えてはわくわくしております。そちらはまだ雨模様でしょうか、どうかご自愛下さい。